実は、カトリックの聖職者の中には、うつ病になり、自ら命を絶つ人も少なくない。
神父にうつ病が多発している背景はいくつかの理由が考えられる。
まず、神父になろうという人には真面目で正義感の強い人が多い。
そのため罪の告白や悩み相談をうけたとき、それをまともに背負ってしまい
大きなストレスを抱え込んでしまう。
また、世俗の欲望を否定するストイックな生活を続けることによるストレスも小さくない。
こうした要因が重なって、心の病に陥る神父が思いのほか多いという。
太田義信神父(64)がうつ病と診断されたのは30代のときだった。
これといったきっかけは思い当たらないという。
病気は突然発症し、長い間、強い自死願望と戦い続けてきた。
実は、太田神父も自分がうつ病になるまで、「自死は罪である」というカトリック教会の教えを何の疑いもなく信じてきた。
ところが病気になった途端、突然に触手のようなものが伸びてきて、強い力で死の世界に引き込まれるような体験を何度も味わったという。
こうした苦しみと闘ううち、「自死」は信仰とは別の問題、善悪で裁くべき問題ではないと感じるようになった。
「自死したいという気持ちが強かったころは、駅で電車を待っている時間がとにかく大変でした。
通過する急行電車に飛び込んでしまうのではないかという不安から、いつもセミのように駅舎の柱にしがみついていました」
それから、こう続けた。
「私の場合、自死が罪である、つまり、宗教的に許されない行為だと教え込まれてきたおかげで、
かろうじてこちら側の世界に踏みとどまれたのかもしれません。
そういう意味では、自死を罪であるとするカトリックの教えには感謝しています。
しかし、自死によって命を落としてしまった人を罪人であると決めつける考え方は、受け入れられなくなりました」
いまでも、カトリックの世界には「自死」は罪であるという考えが根強い。
しかし、近年、教会内部でも自死者に対する名誉回復の動きが進んでいる。
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