そもそも、イルカの知能については神聖視され過大評価され過ぎているきらいがあり、
実際にはネズミと同等か、せいぜい犬・猫並みだと言われています。
確かに、バンドウイルカの脳の重さは約1.6㎏と人間に近く、
見かけも人間のものに似ていなくもありませんが、だからといって、
単純に脳の絶対重量や体重との相対比率が知能と相関するわけではありません。
アジア象の脳は人間のものより5倍重いのですが、
だからといって人間より5倍賢いというような兆候は全く見られませんし、
同じくバンドウイルカの5倍近い重さの脳を持つマッコウクジラにしても、
より高い知能を示唆する行動が観察されているわけでもありません。
そもそも脳は体全体をコントロールする役割を持っているので、
大まかな傾向として、身体の大きな動物ほど大きな脳を要するのは、
コントロールする対象が多いのだから当然のことなのです。
「大まかな」と言ったのは、例えば同じ大きさの動物でも爬虫類のような変温動物と
哺乳類のような恒温動物では、体の機構の複雑性が根本的に違っていて単純比較が
できないからでもありますが、加えて、イルカやクジラのような海洋哺乳類の脳は、
陸棲哺乳類に比べて体温調節を担うグリア細胞が大きくなったために質量が増しているだけで、
ニューロン自体の密度はそれほど高くないこともわかっています。
なお、イルカには集団行動にみられる「社会性」や、「教えられた動作を行う」「遊ぶ」
といった行動も見られますが、これらは他の動物にも見られるもので、特にイルカが
抜きん出ているわけでもありません。
ましてや、人間や類人猿のような創造性を発揮する様子もほとんど見られません。
このように、知能面でも行動面でも特に際立った点はないのですが、
陸上動物ではそれほど目を引かない行動であっても、海洋動物が行うと、
特に過去の歴史において海の生き物とあまり接点が無かった国々の人々の目には
非常に新鮮に映り、心が舞い上がってしまうのかも知れません。
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