たとえば、死にたいと思って自殺の準備をしても、「すさまじい恐怖」に襲われ、
「やっぱりやめた」と、ギリギリのところで思いとどまる人もたくさんいます。
このギリギリのシチュエーションにおいて、「自殺する人」と「自殺しない人」の違いが、
「自殺衝動」の違いとして説明されています。
「いてもたってもいられない死に向かうエネルギー」が「自殺衝動」ですが、
その衝動は長くは続きません。
ピークの自殺衝動は、5~10分と言われています。
誰かと30分も話していると、落ち着いた状態になるのです。
実際、私も救急外来で、何人もの「今すぐ、死にたい」という自殺衝動の強い患者さんの
対応をしたことがありますが、30分ほど話をするだけでも不思議なほどに落ち着いてきます。
後から、そのときの様子を患者さんに聞くと、「あのときは、冷静さを失っていた」
「あのときの私は、どうかしていた」と言います。
そして、「あのとき、自殺しなくて本当によかった」とも言います。
自殺を引き起こしている真犯人は、「自殺念慮」(死にたい気持ち)ではなく、
「自殺衝動」(短時間しか存在しない爆発的なエネルギー)です。
ですから、本当に死にたいと思ったときは、30分だけやりすごせばいいのです。
そのためには、「人に相談すること」がものすごく有効です。
電話する人が誰もいないという人のためにも、「いのちの電話こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)」
が用意されています。
「死にたい」と思う人は、それは何ヵ月も悩み、苦しみ、「自分が導いた答え」と思っていますが、
それは間違いです。
脳内物質の低下が導いた「脳のエラー」です。
血糖値が下がると「お腹がすいた」と感じるように、セロトニンやノルアドレナリンが極端に低下すると、
「死にたい」という感情が自然に湧き出てくるのです。
そんな回復可能な、一時的な脳内物質のアンバランスによって、自分の一生を終わらせることは、
実にもったいないことです。
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