>>1 進化人類学研究所の遺伝学者ミヒャエル・ホフライター氏の、
「たいていの場合、草食動物は肉の消化に困ることはない。逆だとそうはいかないが」
…という言葉どおり、動物の基本形は「肉食」であり、“バクテリアの発酵タンク”となる
巨大な胃や複数の胃を備える等、消化管のどこかを際立って変化させたり、反芻や糞食を行う
一部の種だけが「草食」のみで生きていけるようになっています。
この適応度合いには差があり、反すう動物のようにほぼ完全に適応しているケースと、
盲腸発酵動物のように不完全な適応しかできていないケースがあります。
多くのネズミの仲間、ウサギ、コアラなどは大きな盲腸を持ち、そこで発酵が起きていますが、
このような動物は盲腸から出てくる糞を食べます。
この「糞食」は、盲腸発酵動物の一般的な性質です。
糞食をする理由は、言うまでもなく、発酵したバクテリアを回収して、
バクテリアの作った動物性たんぱく質を消化し、アミノ酸を吸収することにあります。
ウシも盛んに草を食べますが、実は「ウシ自身のために食べている」というより、
「反すう胃の中にいる膨大なバクテリアのために食べている」ということになります。
つまり、「草から直接、栄養を得ている」のではなく、「草を餌にして発酵させたバクテリア、
原生動物など、たんぱく質に富んだ動物性食材を丸ごと腸へ送って消化している」というのが
実態になります。
そもそも草食は効率が悪いので、どうしても量でカバーする必要があります。
たとえばゴリラの腸内には、ヒトには無い特殊な微生物がおり、セルロースを分解してアミノ酸を合成し、
たんぱく質を得る能力があるのですが、そのために必要な膨大な食事量(オスは1日に約30kgもの食事を摂ります)
を満たすために、野生のゴリラは1日の活動時間のほとんどを食糧探しと食事に費やさねばなりません。
また、前述のウサギやコアラと同様に盲腸発酵型の草食動物であるため「糞食」も必要不可欠であり、
動物園のような餌に恵まれた環境であっても、ゴリラは必ず自分の糞も食べます。
ですから、ヒトがゴリラの草食を真似しても(そもそも真似ることは不可能でしょうし、
仮に「自分の糞を食べる」ことも含めて完全に真似できたとしても)、
決してゴリラのような筋肉隆々の身体にはなれません。
また、草食動物といえども、草ばかり食べて回りくどい方法でたんぱく質を得るよりも、
他の動物を捕食して直接たんぱく質を摂取する方がよっぽど効率が良いので、むしろ、
「チャンスさえあれば、やらない理由はどこにも無い」ということになります。
実際に、牛や馬がヒヨコ等の小動物をパクっと食べる姿が、しばしば目撃されています。
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