●タバコと認知的不協和
「タバコは体に悪い」というのは、小学生でも理解している事実ですが、
喫煙者の中には「タバコは悪くない」とうそぶく人が多々います。
これはなぜなのでしょうか?
その謎を解く鍵は「認知的不協和」にあります。
非喫煙者にとっては、「タバコは体に悪い」という「考え」と、
「タバコを吸っていない」という「状態(行動)」は、
その人の中で矛盾することなく、快適に共存しています。
つまり「考え」と「状態(行動)」が一致しています。
ところが、喫煙者が「タバコは体に悪い」と考えると、
「タバコを吸っている」という事実とつじつまが合わなくなり、
非常に不快な状態になります。
これを「認知的不協和」といいます。
この場合、喫煙者が行動を変えて「タバコを吸っていない」
の状態になると快適に過ごせます。
これが「禁煙に成功した人」の状態です。
心身ともに安定し、達成感とともにその後の人生を豊かにします。
逆に、喫煙者が『行動』を変えられない代わりに「『考え』を変えて」、
「タバコは悪くない」と思い込む場合があります。
これを心理学用語で「合理化」と呼びます。
「防衛機制」といって「自分を守る防御反応」の一種です。
禁煙に対して無関心を装う人にはこのパターンが多いのですが、
あくまで自分の心を守るための反応なので、これも無理からぬことです。
決して責めてはいけません。
論理的に論破するなどもってのほかで、そうなるとさらに「合理化」を推し進め、
せっかく禁煙しようとしていた人も「合理化」の波に飲み込まれ、
かえって禁煙から遠ざかってしまいます。
(小学生の頃、今から宿題をしようとしていた矢先に「宿題は終わったの?」と親からいわれ、
やる気をなくした経験は皆さんお持ちだと思います。)
「禁煙してストレスをためた方が体に悪い」
「おじいちゃんはヘビースモーカーだったけど、90歳まで長生きした」
「煙草よりも気にしなきゃならん社会毒は山ほどある」
「自動車の排気ガスのほうがよっぽど体に悪い」
「電磁波の方が身体に悪い」
「酒の方が体に悪い」
…等々、様々なバリエーションがありますが、上記のような発言を聞いたときは、
「認知的不協和を解消するための合理化だ」と判断して、暖かく対応する必要があります。
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