背負えばたちまち武将気分にーー。そんな、甲冑(かっちゅう)を模した赤いランドセルがSNSで話題です。海外から
の問い合わせも受けるインパクトのあるデザインについて、取材しました。
「半端なく目立つ」
話題になったのは、今年の「ジャパンレザーアワード」(一般社団法人 日本皮革産業連合会主催)で「アーティステ
ィックデザイン賞」に輝いたランドセルです。
審査員長評では「軽く機能的で静かなデザインが増えたランドセル市場を活気付かせる魅力がある」と絶賛されたラン
ドセル、その名も「赤色小札黄銅鋲背嚢具足(あかいろこざねおうどうびょうはいのうぐぞく)」。
見た目は、名前以上にインパクトがあります。
ランドセルのふたにあたる「カブセ」部分は、真っ赤な革のパーツをつなぎ合わせており、「甲冑=よろい・かぶと」
のよう。側面にも、鬼のような刺しゅうが施されています。
SNSでは「防御力高そうだなぁ」「半端なく目立つ」「こんなにもランドセルが欲しいと思ったことがあっただろうか」
「(チャンバラごっこで)傘の破壊を加速させそう」などのコメントがつき、注目されました。
「良い革なのに、残りは端切れ」
制作した村瀬鞄行(名古屋市)に話を聞きました。1957年創業で主にランドセルを作っている工房です。
会社の技術力やアイデアを見せるためコンクールに出品しており、過去には「ジャパンレザーアワード」で葛飾北斎
の絵をモチーフにしたランドセルで特選に選ばれています。
今回の〝甲冑ランドセル〟を制作したのは、12年目の職人、岡田憲樹(のりき)さん(42)です。
普段はランドセルの「カブセ」や背あて部分の制作を担当していますが、日頃から「ランドセルを作るときに出る革の
端切れを有効活用したい」と考えていたそうです。
というのも、ランドセルの「カブセ」には光沢があって丈夫な馬のおしりの皮「コードバン」を使っています。コード
バンは牛や豚に比べて流通量が少ない馬革の、特に希少な部分ですが、一頭から取れるのは「カブセ」二つ分。「良い
革なのに、残りは端切れになってしまう」ことを、惜しく感じていたそうです。
もともと「甲冑が好き」だったという岡田さん。「甲冑と組み合わせた格好いいランドセルが作りたい」と考えていた
とき、カブセを金具に留める際に引っぱる持ち手の「ベロ」に注目しました。
小さなベロが並んでいる様子が、小札(こざね)という短冊状の板をつなげた「よろい」の袖の部分に見えたそうです。
ベロをつなげて「カブセ」にし、装飾などにもランドセルを作る工程で出る端材などを利用しました。
通常の仕事の合間に制作して3~4カ月を費やして、部品の数は通常のランドセルが200パーツのところ、400パーツ
を要しました。
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