ときおり、「人工知能(AI)が仕事を奪いに来るのでは?」とわたしに尋ねてくる人がいる。割と手を動かす作業が多いので、自分の仕事は大丈夫だと思っていた。だが、ロボットがナイフを持って切れ味を試すのを見て、その安心感が少し揺らいだかもしれない。
このロボットは、Seattle Ultrasonicsという小さな会社のサイドプロジェクトとして作られたもの。同社を運営しているのは、モダン料理の百科事典として知られるModernist Cuisineや、家庭用低温調理器を普及させたAnovaに在籍していたスコット・ハイメンディンガー。彼はまた、人気スーヴィード調理器メーカーSansaireの共同創業者でもある。それ以前はマイクロソフトに勤めており、Power QueryやPower BIの前身となるソフトウェアの開発に関わっていた人物だ。
「エクセルがとても得意なんです」。マイクロソフト時代を振り返り、彼は笑いながら言った。「本当に得意でした。生意気な若造でしたけど」
最近では、2025年内に家庭用として発売予定の“超音波ナイフ”の開発を手がけている。一見普通のシェフナイフだが、ほとんど気づかれないレベルで振動をおこしていて、驚くほどよく切れる。
しかし、わたしの興味を引いたのは彼のデータ集積サイドプロジェクト、「Quantified Knife Project」だった。21本のナイフを購入し、ロボットアームに装着して一連のテストを行ない、大量のデータを解析して“切れ味ランキング”を算出している。
テストのために彼は食料を買い込み、音楽を流しながら週末は丸ごとロボットアームを稼働させた。5種類の食材を5回ずつ、21本のナイフでスライスする。つまり525回の切断テストを行ない、そこから10万件のデータポイントを収集した。
熱心なナイフオタクにはうれしいことに、彼は各ナイフをBESSテスト(刃物の初期切れ味を数値で測定するテスト)にもかけ、合成ワイヤーを切るのに必要な力を測定したほか、CATRAによるエッジ保持力の試験(切れ味の持続力を数値で測定するテスト)も実施。そのデータもランキングに反映させている。
本来なら怖がったり嫉妬したりすべきなのかもしれないが、わたしはワクワクした。テスト方法や選ぶナイフが少し違えば結果も変わるだろうが、実験には非常に興味が湧いた。
このエクセルオタクが手にしたのは、大量のデータだ。スプレッドシートが山のように並んでいた。彼は数字を駆使して、ナイフをランク付けしていく。わたしは、自分の目で彼のテスト方法を見て、彼が「最高」と評価するナイフについてももっと知りたかった。さらに、テストスタイルの違いも比べてみたかったし、わたしのお気に入りのナイフが彼のランキングではどう位置づけられるのかも気になった。
以下ソース
https://wired.jp/article/quantified-knife-proje...
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