次は民事責任についてです。
メディアによっては、スシローの運営会社の株価が下がり、時価総額100億円以上の損害が出ており、
これが請求対象になるのではといった報道もあります。
しかし、株価下落による損害は、株主の損害ですので、会社の損害ではないのはもちろん(会社も自社株を持っていれば、それは株主の立場としての損害となります)、
果たして、本件の問題行動と株価下落の間に因果関係が立証できるかと言えば、かなりハードルは高いと思います。
なぜなら、スシローの運営会社の株価の動きを見ますと、昨年の9月初め頃には、株価は2000円程度でした。それが今では2900円前後まで上がっています。
つまり、6カ月で1.5倍近くなっており、同社の株価は元々大きく増減している状態だからです。
これに対して、本件問題動画が出回った直後、株価は数十円から100円前後下げたのは事実ですが、
上記のとおり、元から増減のある株価が、この程度下げたからといって、果たしてどこまで本件動画拡散との因果関係があるのかはわかりません。
仮に問題動画による影響で株価を下げたとすれば、それは今後の回転寿司業界に対する不安だと思いますが、
動画拡散後、株価は一度下がったものの、次は上昇を見せてもいます。
これは日々の株価の値動きからすれば当たり前のことではありますが、いずれにしても、
株価の動きから、本件動画公開の影響を特定抽出して立証するのはかなりハードルが高いと思います。
また、上述したように、今後の集客減少による売上減少の損害についても、
問題を起こした高校生が今後も同様の問題を起こすとは言えないにもかかわらず、集客が減ってしまったとすれば、
客が回転寿司とはイタズラに弱い事業モデルなのだと気付いただけに他なりません。
そのため、本件動画拡散と、売上減少の因果関係の立証もかなりハードルは高いのだろうと思います。
また、同様に、仮に今後、寿司レーンを改善して新たな設備導入を行ったとしても、
それは元々リスクのあった寿司レーンのリスク解消を図ったに過ぎず、本件問題動画との因果関係の立証はやはり難しいだろうと思います。
実際、コロナの影響もあり、元々回転寿司業界は従来の寿司レーンを取り換えている業者もあり、
このような事態は元から回転寿司の事業モデルが有していたリスクなのだろうと思います。
結果、賠償責任として比較的認められやすいのは、当該店舗の湯呑み、醤油さし、寿司レーンの清掃費用と、
醤油さしの中身の廃棄交換費用、また、これらの対応したことを広報する費用等に限られる可能性は十分あるなと考えます。
とすると、賠償額は、数十万円から、せいぜい100万円程度に収まってしまう可能性もあります。
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