徳島の夏の阿波踊りは、祭りか、興行か――。県内で最も盛り上がる徳島市の阿波踊りで今夏、有料演舞場に過去最高額
の1万5000円の観覧指定席が新設される。新型コロナウイルスの感染症法上の5類移行を受け、主催者は人出が戻ると見込ん
で強気の価格設定にかじを切った。興行化に拍車がかかる現状を、地元の人たちはどう見ているのか。
「徳島の人にとって、阿波踊りは地域の祭りという意識が強い。町内会ごとに受け継がれてきた本来の踊りの意義が薄
れてきている」。危機感をあらわにするのは「本家大名連」の清水理(さとる)連長(75)=同市=だ。清水さんは「男踊
り」の踊り手歴50年。「近所の顔見知りが飛び入りで一緒に踊ってくれるのがうれしい。『踊る阿呆に見る阿呆』と言っ
て、踊り手と観客が一体となることに意味がある」と強調。「高額チケットを地元の人が買うわけがない。県外の観光客に
見せるだけの興行路線を突き進んでいる」と批判する。
コロナの影響で3年ぶりの本格開催となった昨年の期間中(8月12~15日)の人出総数は、推計で計46万人。コロナ禍前
の19年の70万人を大きく下回った。チケットの販売率も6~7割と振るわなかった。
今年は、チケットが必要な有料演舞場を通常の4カ所から昨年同様に2カ所に縮小する。阿波踊り実行委員会(事務局・
徳島市)は3月、今夏のチケットを昨年比で200~1200円値上げすると発表した。1~4割の大幅値上げだ。さらに、「南内
町(みなみうちまち)演舞場」(同市南内町)に1万5000円の指定席を100席新設する。最も華やかで人気のある「総踊り」
を正面から観覧できる「VIP席」だ。
実行委などによると、過去のチケット最高額は約6000円で、その倍以上の価格となる。近隣の鳴門市では総踊りは行わ
れないが、料金は一律700円と手ごろで、県内の他の開催地と比較しても破格だ。新設の指定席は1日2部入れ替え制とし、
4日間で計800席を用意。6月からチケットぴあウェブサイトで先行販売し、一般販売は7月から始まる。
徳島市の田中みどりさん(65)は「今や阿波踊りは東京や大阪など全国各地で開催されている。高額なチケットを買っ
てまで徳島に見に来たいと思う観光客がいるのだろうか」と疑問を投げかける。
一方、実行委は国内のクルーズ船の徳島港寄港が今夏予定されていることから、富裕層の購入が見込めると説明。円安で
海外からの観光客も増えるとみている。過去には主催団体の一つだった市観光協会の累積赤字問題などもあり、担当者は「収
支が赤字にならないよう検討した結果の価格設定だ。無料演舞場でも観覧できる」と理解を求めた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3712ae476dff20b94dd96...
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