今回、中国人の方が主張されているそうですが、中国人だからという区別も一切しておらず、アンケートは英語や韓国語版なども用意し、日本語が話せない全ての外国人に回答してもらっています。
ーー医師法ではいかなる理由でも診療を拒否してはいけないとあります。とはいっても、不十分なコミュニケーションでは互いにリスクがあるということですね。
A氏 そうです。すべては患者様の安全のためです。アンケートの文言で不快な思いをされたのなら申し訳ないと思いますし、改善も検討します。
ただ、決して差別ではなく、より的確な治療をするためにやっているということは理解してほしいと思います。
増える外国人患者と医療機関の対応体制のギャップ
A氏は、今回の中国人少年側の対応を誠実に受け止め、編集部の取材にアンケートの意図を明かしてくれた。病院側もある意味では被害者だったといえそうだが、そうなると問題の根っこはどこにあるのか。
実は、コロナ後、インバウンド需要が回復し、国内の多くの施設でキャパオーバー問題が発生している。医療機関も例外ではない。
そこで厚労省は、訪日外国人および在留外国人向けの対応医療機関不足対策の一環として「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」を公開。同リストは、都道府県ごとに外国人対応可能な医療機関を募り、それらを厚労省がリストに取りまとめ、年2回更新しているものだ。
「まだまだ対応の医療機関は十分とはいえない状態ですが、各都道府県が窓口になり、サポートもしています」(厚労省)
観光庁とも連携し、日本政府観光局のウェブサイトで日・英・中・韓の4か国語に対応した医療機関の情報プラットフォームを設置。その利用を促進しながら、外国人患者に対応する医療機関探しのフォローもしている。
少子化の一方…外国人は年々増加
法務省によれば、今年6月末現在の中長期在留者数は331万1292人、特別永住者数は27万7664人で、これらを合わせた在留外国人数は358万8956人。前年末(341万992人)に比べ、17万7964人(5.2%)増加している。
また、観光庁の発表では2023年の訪日外国人旅行者数は2507万人でコロナ前の3188万人(2019年)に迫るまで回復。少子高齢化による人口減少の一方で、日本に滞在する外国人は増加の一途をたどっている。
そうした中で明らかになった、都内の一医療機関での中国人患者への対応。根本には、外国人を受け入れる日本の各施設のキャパ不足という本質的問題があるのかもしれない。
施設側にとって、言葉や文化の違いがある外国人にも対応することは、より負担が大きくなる。それでも安易にサービスの提供を断れないとなれば、いつハレーションが起こっても不思議はないだろう。対策が講じられているものの、当面はあちこちで、今回発生したような軋み音が響き続けることになりそうだ。
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