「昔は野蛮だった」では済みません。
つい最近まで(あるいは今でも?)「3た論法」に基づいて普通の風邪に
抗菌薬を処方されることは珍しくありませんでした。
原則として風邪には抗菌薬は不要で抗菌薬を使っても使わなくても治ります。
ですが、風邪の患者さんに抗菌薬を処方して治ったという経験をした医師は、
抗菌薬が風邪に「効く」と誤認します。
次の風邪の患者さんにも抗菌薬を処方するでしょう。
ついでに言えば、患者さんからは「よく薬を処方してくれるいいお医者さん」
と肯定的に評価されることも抗菌薬を処方する動機になります。
現在は、医師の経験だけに頼らず、臨床試験などから得られた
質の高いエビデンスを活用して医療が行われています。
いや、「行われています」は言い過ぎでした。
エビデンスに基づいた医療が望ましいとされています、
ぐらいが現実に近いでしょうか。
この「根拠に基づいた医療」(EBM=evidence based medicine)の歴史は意外と浅く、
30年ぐらいです。
新型コロナのように新しい病気は、十分なエビデンスを利用できないため、
ある程度は手探りで治療を行うこともあります。
しかし、それはあくまでもやむを得ないからであって、医師の経験による「効く」
という判断は間違っているかもしれないことを常に忘れてはいけません。
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