●「知的ドーパミン中毒」かも
――最近、陰謀論にハマる人が増えているように感じます。精神科医の目から見て、これはどういう現象なのでしょうか?
益田裕介(以下、益田) 今、本当に多いですよ。
昔だったら、ああいうことを言ってる人を見ると、精神的な不調を疑われたりもしていましたが、
最近はもっと日常的になってきています。
背景にあるのは、「分からないことが増えている」という状況です。世の中が複雑すぎて、
何が本当か分からない。
そんなときに、誰かが単純で分かりやすい説明をしてくれると、「分かった!」って感じがして、
すごく気持ちがいいんですよね。
たとえば、「なんで生活がこんなに苦しいの?」ってときに、「財務省が悪い」「国が全部仕組んでる」
みたいな説明をされると、納得した気になる。
いわば「知的ドーパミン中毒」とでも呼べるもので、何かを発見したときの快感がクセになっていくんです。
――そもそも陰謀論にハマることで、何が問題になるのでしょうか?
益田 いちばんの問題は、「思考が止まってしまう」ということです。
本来、世の中のことは少しずつ理解を積み上げていくものなのに、「これが真実だ!」って言い切ってしまった瞬間に、
そこで学びが止まってしまう。
結果として、知識がつかなくなり、変化にも対応できなくなる。
だから、どんどん騙されやすくなるし、視野も狭くなっていくんです。
●「憎悪」でつながる人々
――陰謀論にハマる人には、どんな特徴があるのでしょう?
益田 まず、EQの低さがある場合もあります。
EQというのは、優しさとか我慢強さとか、気持ちの安定みたいな“心の知性”ですね。
でもそれだけじゃなくて、孤立感や社会への悔しさ、ヘイトみたいなものを抱えている人も多いですね。
社会の中でうまくいかないことが多かった人、居場所がなかった人。
陰謀論って、「共通の敵」を作るから、人と人がつながりやすいんです。
「財務省が悪いよね」って言えば、同じ考えの人とすぐに仲間になれる。
野球の話題とか雑談はできないけど、「悪口」なら話せるって人もいる。
だから孤立していた人ほど、陰謀論で人とつながれるっていう皮肉な構造があるんです。
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