「死体を煮て溶かしている」『ごんぎつね』の読めない小学生たち…
石井光太が明かす“いま学校で起こっている”国語力崩壊の惨状
いま、子供たちの言葉と思考力に何が起こっているのか。
「この話の場面は、死んだお母さんをお鍋に入れて消毒しているところだと思います」
「私たちの班の意見は違います。もう死んでいるお母さんを消毒しても意味ないです。
それより、昔はお墓がなかったので、死んだ人は燃やす代わりにお湯で煮て骨にしていたんだと思います」
「昔もお墓はあったはずです。だって、うちのおばあちゃんのお墓はあるから。でも、
昔は焼くところ(火葬場)がないから、お湯で溶かして骨にしてから、お墓に埋めなければならなかったんだと思います」
「うちの班も同じです。死体をそのままにしたらばい菌とかすごいから、煮て骨にして土に埋めたんだと思います」
生徒たちが開いていたのは国語の教科書の『ごんぎつね』だ。
授業で取り上げたのは、ごんが兵十の母親の葬儀に出くわす場面である。そこでは、兵十の家に村人たちが集まり、
葬儀の準備をしているシーンが描かれる。家の前では村の女たちが大きな鍋で料理をしている。作中の描写は次の通りだ。
〈よそいきの着物を着て、腰に手ぬぐいを下げたりした女たちが、表のかまどで火をたいています。大きななべの中では、
何かぐずぐずにえていました〉
ごんが見た光景なので「何か」という表現をしたのだ。葬儀で村の女性たちが正装をして力を合わせて大きな鍋で
何かを煮ていると書かれていることから、常識的に読めば、参列者にふるまう食事を用意している場面だと想像できるはずだ。
校長の男性は、30年以上の教員経験があり、国語を専門にしていた。彼は次のように語った。
「今日のケースは少々極端でしたが、最近は多かれ少なかれあのような意見が出るのは普通です。
教員もそれをわかっているので、先ほどの授業でも班になって話し合わせたのでしょう。それでも
ああいう回答になってしまったようですが……。残念ながら、似たようなことは、私も他の学校で
しばしば経験してきました」
校長はつづける。
「学校は学力を育てる場なので、子供たちが誤読をするのは悪いことではありません。そこで教員に
正してもらうことで、読解力を高めていけばいい。でも私は、こうした子たちの反応は単なる
読み違いではないと考えています。」
https://bunshun.jp/articles/-/8043...
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