揺らぐエレベーターの安全神話
ずさんな保守点検で相次ぐトラブル 見つからぬ処方箋
エレベーターでの死傷事故が相次いでいる。昨年1月の仙台市のマンションでの事故は、
部品の交換が適切に行われていなかったことが原因だった。エレベーターは費用の問題から
部分的に補修されるケースが多く、新旧が混在している装置や部品の情報を作業員が
すべて把握するのは困難な上、中小の保守・点検会社では競争の激化で十分な作業時間が
取れないことも多い。業界関係者は「安全のために費用と時間にゆとりが必要だ」と警鐘を鳴らす。
国は09年から、扉が開いた状態でエレベーターが動く「戸開走行」を防止するための安全装置の
設置を義務付けている。ただその設置率は伸び悩んでいる。
国土交通省によると、23年度に定期検査の報告があったエレベーターは全国で75万7928台。
このうち、安全装置を設置しているのは28万90台で設置率は約37%にとどまっている。
安全装置の設置は建築基準法で義務付けられているが、09年の改正前に建築された建物は
対象外となる。安全装置をつけなくても法的に問題がないため、設置が進まない要因となっている。
また国交省の資料などによると、既存のエレベーターに安全装置を後付けするための費用は
機種によっては500万円以上になる。工期が1~2週間程度かかることもあり、所有者が設置の
必要性を感じていないケースが少なくないという。
メンテナンスにできるだけお金をかけたくないという所有者もいる。数百万円やときには1千万円以上
かかる大規模な改修は特に進まない。しかし一部改修で済ませてしまうと、新旧の部品が混在して
メンテナンスが難しくなるという問題もある。安全装置の設置も法改正前からあるエレベーターには
強制力がないので進んでいない。
日本人はエレベーターが安全だと思っているが、老朽化によってどんどんリスクが高まっている状況にある。
昨今の夏の猛暑も劣化を早める原因になる。
国は法定点検の運用厳格化や罰則規定を設け、きちんと保守や改修ができていないエレベーターは
使用停止にするなどの対策をとるべきだ。
記事全文
https://www.sankei.com/article/20250729-JCTW6C2JMZNFJ...
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