楽器演奏を4年続けた高齢者は「脳の老化」が停止
脳科学で分かってきた「継続は力なり」
およそ3人に1人が65歳以上の現代社会で、高齢になっても新しい趣味に
チャレンジしたいと考える人は珍しくない。そんな人には楽器の演奏が
ぴったりかも―。脳科学の観点からアプローチした京都大などの研究チームは、
高齢期に始めた楽器練習を続けた人とやめた人では、長期的に認知や脳機能の
老化現象に差が出ることを初めて明らかにした。古くから存在する「継続は力なり」
ということわざを裏打ちするような成果に、研究チームは「高齢でも始めて遅い
ということはない」としている。
研究を取りまとめたのは、心理学や認知神経科学が専門の積山薫・京大名誉教授
(研究当時は同大学院教授)。認知症の発症率が低い人たちが親しんでいる趣味の
一つとして楽器の演奏があることは一般的に知られていたが、学術的に検証するため、
平成30年に楽器初心者の高齢者66人(平均年齢73歳)を対象にした研究を行った。
片方のグループには週1回、京都市内の老人福祉施設で4カ月間にわたって
鍵盤ハーモニカのグループレッスンを受けてもらい、何も練習しなかった
もう一方のグループと、脳の働きに差異があるかどうかをMRIによる計測などを用いて比較。
その結果、レッスンを受けたグループのほうが、楽器演奏と直接関係しない言語記憶を
含めて認知機能や脳機能が向上していることが確認できたという。
新たな研究では、そこから4年後まで楽器演奏を継続していた13人と、途中でやめた19人を比較。
最初の研究時点では2つのグループの認知機能や脳構造に差はなかったが、年を重ねた4年後には
違いがみられた。途中でやめたグループは、言語的なワーキングメモリの成績が低下し、
脳の部位である被殻が萎縮していた。一方、継続していたグループはそうした成績の低下や
萎縮がなかった。
積山さんは「高齢期になると足腰や心臓などの問題から立ったり動いたりするのが
難しくなる人もいるが、楽器は比較的続けやすい」と指摘。他の人と一緒に取り組む
楽器演奏には社会的交流を促進する側面もあり、「認知機能の維持にもつながり、高齢から
始めても決して遅くはない。ぜひ長く続けてみてほしい」と話している。
研究成果は米国の国際学術誌電子版に掲載された。
https://www.sankei.com/article/20250821-VGJHHW4UABOVN...
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