街中に出没する「ぶつかりおじさん・おばさん」の動機は一体なに?
識者は「過剰な正義感を振りかざしている」と指摘
肩がぶつかったことで傷害事件を引き起こした例は複数報じられている。
なぜ、肩がぶつかったくらいで“キレて”しまうのか。傷害事件に発展する
ケースはまれだろうが、街中でも通行人同士の体がぶつかって言い争う姿は
時折見かける。東洋大学社会学部社会心理学科の戸梶亜紀彦教授は
「歩きスマホ」が原因になっているケースが少なくないとみる。
「スマホ画面に集中し、さらにはイヤホンまでつけて歩く人の姿をよく目にします。
彼らは衆人の中にいながら完全なプライベート環境をつくり出している。
そういう状況で他者と接触すると、驚きだけでなく『自分の空間に侵入された』
という怒りが芽生え、過剰に反応してしまうのでしょう」
戸梶教授は、歩きスマホをしている人は加害者だけではなく、周囲から
“ターゲット”にされ被害者にもなり得ると指摘する。
「一部ですが、歩きスマホをする人に対して、あえてよけない人がいます。
その行動には、『前を見て歩かないやつが悪いのに、なぜ自分が道を譲らなければ
いけないのか』という心理が働いているのでしょう。『痛い目に遭わせてこらしめて
やろう』と過剰な正義感を振りかざし、自分からぶつかりに行くケースさえあるようです」
戸梶教授は、ぶつかりおじさん・おばさんが次々現れる事態は、
現代のSNS社会に関連があるのではないかと仮説を立てている。
日常的にSNSに触れていると、自らの倫理観や善悪の基準を絶対視してしまう
危険性が指摘されている。似たような思想や価値観を持つ人たちがコミュニティーをつくり、
その中で意見を発信すれば、多くの賛同が寄せられる。そのうちに、自分の考えは
世の多数派だと思い込んでしまう。一般に「エコーチェンバー」と呼ばれる現象だ。
「ネット空間で自己主張をしたり誰かを批判したりするうち、次第に現実世界においても、
“正義”のためなら相手にダメージを与えてもいいと思ってしまい、身体的な攻撃を
行うようになっているのではないか。クレーマーの増加からも見て取れるように、
今の日本社会では他者への攻撃性が蔓延しており、すでに危機的状況のように思います」
肩がぶつかっただけで警察沙汰になる世の中には、
想像以上に深刻な“闇”があるのかもしれない。
https://dot.asahi.com/articles/-/26389...
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