創業59年、地元に愛された漬物店が食衛法改正で閉店
「お客に悪い。どう言うても、しょうがないよのう」
https://www.fnn.jp/articles/-/70949... 6月から始まった食品衛生法の改正で、昔ながらの手作りの漬物を提供する
生産者の多くが姿を消した。惜しまれつつ、店を閉じる決断をした広島・
廿日市市の高齢夫婦。最後の漬け込み作業に何を思ったのだろうか。
廿日市市の広島電鉄宮島線沿いにある山田漬物店。59年間、夫婦2人が二人三脚で営んできた。
昭和のガラス戸が連なり、その上を薄緑色のテントが覆う店構え。地域で長く愛されてきた
年月がにじみ出ている。「本当なら90歳くらいまでやりたかった」そう話すのは妻・美智子さん(87)
となりで笑っているのが夫・山田英義さん(88)だ。「僕のほうはええわ。どうでもええ」
食品衛生法の改正に伴って、6月1日から漬物製造業に営業許可が必要になり、
手洗い場や冷蔵庫の設置といった衛生面の基準が設けられたのだ。
県内各地の道の駅などに商品を出荷する人が対応を迫られる一方、
山田さん夫婦は店を閉じることを決めた。
英義さんは16歳から広島市内の漬物店で修行し、1965年に独立してからも一貫して
昔ながらの製法と道具を守ってきた。名産の広島菜漬けを全国に手広く出荷していた
時期もあったという。59年もの間、手作りで漬物を製造してきた山田漬物店だが、
5月中旬、保健所の検査で「営業許可はおろせない」と通知を受けた。夫婦の年齢や
少なくとも数百万円はかかる設備費用を考えると、閉店するほかなかった。
5月27日が最後の販売になった。
地元の常連客も複雑な思いだ。
「スーパーでは売っていないような味です。仕方ないですよね。ルールですから…」
「おいしいものがなくなっていくのがね。もうちょっと方法はないんかなと思ってね」
最後の白菜漬けは、数時間であっという間に売り切れた。空っぽになった樽をのぞき、
「みてた」と英義さん。「なくなった」を意味する広島弁である。達成感とも寂しさとも
聞こえる一言だった。「ありがたいことじゃと思いますよ。長いことお世話になってね」
英義さんがそう言うと、美智子さんは「涙が出る…」と鼻をすすった。英義さんはただ
黙ってほほ笑んでいた。
食品衛生法の改正で「手作りの味」は岐路に立たされている。
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