人類未踏の「マントル」、掘削は国際競争の様相…
日本は深部の人工的な再現に成功
地球内部の「マントル」は人類未踏の領域だ。その性質を調べれば、
地球の成り立ちや地震・火山の活動、気候変動や生命誕生の謎などを
解き明かせる可能性がある。マントルの実像に迫る最新研究が日本で進んでいる。
「地球内部は宝石箱だと実感した」。広島大の秋沢紀克准教授は昨年6月、
日本の有人潜水調査船「しんかい6500」で東北沖の水深約6500mへ潜り、
高さ数百メートルの海底火山を調査。山肌で透き通った黄緑色のかけらを
大量に含んだ岩石の露出面を見つけ、一部を採取した。
マントルに到達するには地殻を陸地では約30km、海底では約6km掘る必要がある。
最初に到達を目指した米国は1950~60年代にメキシコ沖で海底下約200mまで掘ったが、
技術的・経済的理由で計画は頓挫した。これを引き継いだ形の日本は2005年に
地球深部探査船「ちきゅう」を建造。ドリル付きのパイプで地殻を貫通する計画があり、
18年には紀伊半島沖で海底下3262mまで到達した。海洋研究開発機構の阿部なつ江主任研究員
は「耐久性の高い装置の開発が必要だ。技術的には可能だが、改良資金の確保が課題だ」と話す。
ちきゅうは1か月の航海に約10億円かかるケースもある。
中国も昨年、マントル到達を目標に掲げた初の掘削調査船「夢想号」を稼働させており、
国際競争の様相も呈している。簡単には到達できないマントルだが、日本独自の技術で
マントル深部の状態を人工的に再現する実験には成功している。
さらにマントルの下にある核に、地球の全海水の50倍に相当する水が水素の形で
存在することも21年に明らかにした。大量の水について、広瀬さんは、約45億年前の地球誕生時に
「微惑星」と呼ばれる小天体とともに運ばれ、地球の中心部に閉じ込められたとみている。
「地球表面に水がわずかに残った結果、陸地と海が共存することとなり、生物が多様に
進化する環境が生まれた」と語る。
マントル研究は人類がこの世界を捉え直す鍵になるかもしれない。到達の朗報が待ち遠しい。
https://www.yomiuri.co.jp/science/20250812-OYT1T50201...
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